自由軒 昔のカツ丼

ネコ色街の銭湯。セクシー。


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心身共にいささか疲れが見える。



スパッときっぷの良い食べ物が食べたいと思い、東茶屋街の自由軒へ。


金沢の茶屋街の芸妓さんたちがお店に通うなかで生まれたという牛ヒレ&キャベツ&キュウリのサッパリ系カツ丼。



ここのは丼の下からごはん、カツ、野菜と重ねられているのが特徴である。
香の物と味噌汁が添えられる。


芸妓さんのプライベートリクエストから生まれたという出自をもって、メンタル&フィジカルに効くメニューであろう事は想像に難くない。


丼の蓋が閉まらない程たっぷりと盛られているのは、サッとゆがき、ほんのりと温かいキャベツとキュウリ。


しっかり食べたいが、美味しく野菜も採りたいというお姐さん方の女心が垣間見える。


その下に一口大の牛ヒレのカツ。薄めのお肉に極薄の衣。あくまでも火は通しすぎず中心は赤みの残る火加減。


肉らしさを失わぬ微妙なバランスをもって揚げられている。

上に乗った温野菜がカツを程よくしっとりとさせる。


この二者を活かし、ごはんと繋ぐのが備え付けのウスターソースである。


比較的大胆に回しかけて良い。


たっぷりと温野菜の上からかければ、カツにたどり着く頃にはちょうど良い塩梅になっているはずである。


このウスターソースが実に良い仕事をする。


野菜の甘みを引き立て、
極薄の衣にじんわりと染み渡り、
ごはんと野菜とカツの三位一体を完成させる。


コレが無ければ成立しないであろう影の立役者。


ウスターソースがそれぞれを引き立てることで、カツ-ごはん ごはん-野菜 野菜-カツ 全て のどの組合わせも素晴らしい物になるのだ。


時に男に発破をかけ、

時に優しくなだめすかし、

絶妙な手練手管をもって男を翻弄し、

常に明日への活力を供給してきたお姐さん方が、疲れた自分の心身を連れて近所の洋食屋に通い、大将と軽口を叩きながら、また、自分の心と身体が喜ぶ味を一緒に作りあげたメニューだけのことはある。


過去の金沢に繰り広げられたであろう情景を想像しながら、
あっという間に完食してしまった。


内容の割に腹にたまる具合が非常に良い。

銭湯にすぐ向かうよりは、少し散策するのが良さそうである。


風情の残る茶屋街を歩くと、色々な想像ができて楽しい。


男と女の違いの不思議から発生した「遊郭」の文化。


男の能天気とプライド。

女のしたたかさと情け深さ。

その間に生まれる功罪は善悪では決して測れない「人の性」の奥深さではないだろうか。


その中心で働く女達と、そこに通う男達。


お姐さん方が仕事上がりにソースをたっぷりと回しかけ、仲間と客に聞かせられない会話をしながら平らげ、明日への活力を充填して、お腹いっぱいで岐路につくところを想像すると何とも格好が良い。


などと空想しつつ散策すれば腹もこなれてきた。


銭湯に足を向ける頃合いである。

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